モタサイとAIで学んだ、サスセッティングの「本質」 [2/3 プリロード編] 〜「仕事場」を整え、自らの技術で、荷重を操る。〜

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前回の連載、【第1回モタサイとAIで学んだ、サスセッティングの「本質」 [1/3 スプリング編] 〜バネの硬さは、あなたの体重で決まる。〜】では、バネ定数は「体重・車重・走行荷重」のバランスで決まるという話をしました。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。

「メーカーが想定した体重より、重かったり軽かったりしたらどうするの?」

そのズレをある程度補正し、サスペンションを「正しい仕事場」に連れ戻す作業。それがプリロード(初期荷重:Pre-Load)です。

プリロードの原理:なぜ「あらかじめ縮める」のか?

プリロードとは、文字通り「スプリングをあらかじめ(Pre)縮めて荷重(Load)をかけておくこと」です。サスペンションユニットのアジャスターを回してスプリングを物理的にギュッとプレスし、全長を短くします。

これによって何が起きるのでしょうか?

反発のスタート地点を上げる

例えば、50kg分のプリロードをかけた(縮めた)バネは、最初から「50kgで押し返している状態」です。そのため、50kg以下の荷重(人が乗るなど)ではピクリとも動き出しません。

これが、「体重が重い人に対応できる理由」です。

体重100kgの人が乗っても、あらかじめ50kg分をバネが突っ張ってくれているので、沈み込みすぎを防ぎ、美味しいストローク範囲(仕事場)を確保できるのです。

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初心者はなぜ「最弱(プリロード最小)」から始めるべきか?

専門家が「まずは一番弱くして乗ってみて」と勧めるのを良く見聞きします。これは、「ストロークを最大限に確保するため」です。

  • サスペンションに仕事をさせる: 締め込みを最小限にすれば、小さな荷重でも敏感に動き出します。「サスペンションが全域を使って仕事をしている」という感覚を身体で覚えるのに最適です。
  • 接地感という安心: バネを余計に縮めないことで、路面の凸凹にタイヤが柔軟に追従し、高い接地感が得られます。これが、初心者にとって何よりの「安心感」に繋がります。

操縦技術に合わせて変化する「設定」の正解

上達して積極的に荷重コントロールができるようになると、最弱設定では「フワフワ」して不安定に感じ始めます。

そこでプリロードを強めると、バネに蓄えられたエネルギーが「車体を起こす力」を助け、クイックな旋回が可能になります。また、車高が上がりキャスター角が立つことで、ハンドリングの直進安定性よりも旋回性能が際立ってきます。「設定」でバイクの動きを助けてもらう、中級のステップアップです。

さらにその先、バイクの操作(ブレーキングや抜重、身体の使い方など)で自在に荷重コントロールができる「上級者」の領域に入ると、またプリロードの考え方が深まります。

  • 「設定」に頼らない: 自らの技術で瞬時に必要な反発力を生み出し、クイックな動きを「作る」ことができるようになります。
  • 接地感の極大化: そのため、あえて再びプリロードを弱め(サグを多めに取る)、サスペンションの路面追従性とタイヤの接地感を最大限に生かす、といった選択肢も生まれてきます。

このように、「初級:まず動かして安心を得る」→「中級:設定でクイックさを助けてもらう」→「上級:技術でさらに自由度を広げる」といった具合に、操縦技術の進歩に合わせて「正解」もダイナミックに変化していきます。

筆者の視点:まとめ

プリロードは「バネを縮めて、反発の準備をさせること」。

決してバネを硬くしているわけではなく、自分の体重や、技術、走り方に合わせてサスペンションの「仕事の開始位置」を整える作業なんですね。

どんなに調整しても1/3の沈み込み(サグ)が取れないなら、それはもう調整の域を超えた「バネ交換」という本質的な外科手術が必要です。

自分の体格・走りに合わせて、サスペンションと「物理的な対話」をする。この入り口に立つことが、安全で楽しいライディングへの第一歩ということなんですね。

**→ 最終回:モタサイとAIで学んだ、サスセッティングの「本質」 [3/3 ダンパー編] 〜「速さ」を制して、乗り味をデザインする。〜へ続く**

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