カブの走りが劇的に変わる。駆動系「三種の神器」+αで剛性を完成させるカスタム術【JA59】

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はじめに:新車の違和感から始まった「精度」への挑戦

スーパーカブ110(JA59)が納車されて家に帰る段階で、アクセルオフで音が出ていました。どうしても気になってしまうその「音」の正体を探ることにしました。

走らせていると、アクセルをオフにした瞬間に、チェーンケースの奥から「カチャカチャ…」と、チェーンが何かに擦れるような、そこそこ大きな異音が聞こえてました。

道具としての信頼性は誰もがよく知っているところで、よくできているカブですが、なぜ新車の状態からこんな音がするのだろう。原因を探ってみると、リアスプロケットの組み付け時に生じた、ごく微細な「偏芯(センターのズレ)」でした。

カブという実用車の量産精度としては、もしかしたら許容範囲内のことなのかもしれません。普通に乗る分には何の支障もないレベルです。

が、一度気になり始めるとスルーできないのが僕の性分。スプロケットの取り付け位置を微妙に調整し、なんとかその音を消すことができました。

この「精度の甘さ」の存在を身をもって知ったことこそが、すべての始まりでした。

「もし、この駆動系を社外パーツなども含めてもっと精度高く組んだら、カブの走りはどれだけ良くなるんだろう?」

そんな知的好奇心と、カブの本当の性能を発揮いさせてみたい、という想いから、僕の「精度を追求するカスタム」がスタートしました。まぁ、僕ができる範囲内ではあるんですけどね…。

この計画は、これまで段階を追って進めてきました。

まずは「フロントアクスルシャフトの交換」。路面からの情報がクリアに伝わるようになり、接地感と安心感が劇的に向上しました。
次に、スイングアームの要である「ピボットシャフトのメンテナンス」。新車時にはグリスが充分とは言えなかった部分をきっちり清掃・グリスアップしたことで、車体の無駄なふらつきが収まり、真っ直ぐ走る力(直進安定性)が格段に良くなりました。

前輪(フロント)が整い、車体中央(ピボット)が整う。

そうなると、次に気になるのはやはり「後ろ(リア)」です。前と真ん中がシャキッとしたことで、これまで隠れていたリア周りの駆動ノイズや微細なガタが、かえって際立って感じられるようになってしまいました。

そこで今回選んだターゲットが、駆動系のリフレッシュと、リアの足回りの同時強化でした。

  • フロントスプロケット
  • リアスプロケット
  • ドライブチェーン
  • リアアクスルシャフト

これら駆動系の「三種の神器」に加えて、最後のピースである「リアアクスルシャフト」を同時に交換することにしました。

目指す最終目標はシンプルです。
「フロント」「ピボット」「リア」。この車体を支える3つの『軸』の精度を揃え、車体の背骨に一本のブレない『芯』を通すこと。

駆動系のノイズを消し去るだけでなく、シャーシ全体の剛性を完成させるための、最後の仕上げが始まりました。

選定:リアの質感を決める「三種の神器」+α

リアのクオリティを決定づけるパーツの選定にあたっては、物理的なメリットとAIとの対話を重ねて、論理的な最適解を導き出しました。

  • フロントスプロケット:ローギヤードすぎる純正比の改善
    カブ110(JA59)の純正フロントスプロケットは14Tです。実用車としての登坂力や荷物積載時の力強さを重視した設定ですが、一人乗りで街乗りやツーリングをするには、ややローギヤード(低速寄り)すぎます。特に60km/h巡航時のエンジンの唸りと微振動は、長距離を走る際の大きなストレスでした。また、強すぎる1速のエンジンブレーキはギクシャク感を生み、多くのカブ乗りが「2速発進のジレンマ」を抱える原因になっています。
    そこで、フロントを15Tにロング化(高速寄り)することにしました。これにより、60km/h巡航時のエンジン回転数を下げて快適レンジを高速側にシフトし、1速を「使えるギア」へと生まれ変わらせます。
  • リアスプロケット:社外品によるバネ下重量の軽量化と精度追求
    フロントの丁数を変更したため、リア(純正37T)の丁数はあえて変更せず、駆動伝達効率と精度の向上を狙います。選んだのは社外の高品質ジュラルミン製スプロケット。純正のスチール製に比べて圧倒的に軽く、回転精度も極めて高いのが特徴です。バネ下重量を削減することで、サスペンションの追従性を向上させ、同時に偏芯による回転ムラを徹底的に排除します。
  • ドライブチェーン:3000kmで伸びきった純正からの卒業
    純正のチェーンは走行わずか3000kmで偏伸び(部分的な伸びの不均一)が発生し、調整限界が近くなっていました。カブはチェーンカバーに覆われているためメンテナンスサイクルは長めですが、それでも初期チェーンの品質はお世辞にも高いとは言えません。「社外の高品質チェーン(EKやD.I.Dなどの428サイズ)に交換する方が、駆動ロスの削減と耐久性の面で圧倒的に高性能である」というAIとの徹底的な議論を経て、信頼性の高い社外品への交換を決断しました。
  • リアアクスルシャフト:フロントとの整合性を取るための「最後の軸」
    フロントアクスルシャフトをクロモリ製に交換し、その剛性変化と直進性の向上に大きな衝撃を受けました。しかし、フロントだけを強化すると、今度はリアアクスルの「しなり」や「遊び」が相対的に目立つようになります。前後のバランスを整え、スイングアームからリアホイールへと伝わるトラクションを一切逃がさないために、リアアクスルシャフトのクロモリ化は「避けて通れない最後の仕上げ」でした。
  • なぜ今、同時交換なのか
    スプロケットとチェーンは、互いに噛み合いながら摩耗していく関係にあります。一部だけを新品にすると、古いパーツの偏摩耗が新しいパーツを急速に攻撃し、寿命を縮めてしまいます。すべての摩耗状態を一気にリセットし、駆動系全体の噛み合わせを「点」ではなく「面」で整えるためにも、このタイミングでの同時交換がベストな選択でした。
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実践:駆動系交換の作業工程

それでは、ガレージでの実際の作業工程を振り返ります。カブのリア周りは一見シンプルですが、チェーンケースやドラムブレーキの機構が絡み合うため、丁寧な手順とトルク管理が求められます。

  1. 準備と分解
    まずは車体をセンタースタンドでしっかりと固定します。リアのチェーンケース(上下)を外し、リアブレーキの調整ナット、ブレーキロッド、トルクリンクを切り離します。この際、割りピンやスプリングなどの小さなパーツを紛失しないよう、トレイに整理して保管します。
  2. パーツの取り外し
    アクスルナットを緩め、シャフトを引き抜いてリアホイールを車体から取り外します。スプロケットハブをホイールから分離し、古いリアスプロケットを外します。エンジン側のスプロケットカバーも外し、フロントスプロケットと古いチェーンを完全に撤去します。蓄積した古いグリスや泥汚れをパーツクリーナーで徹底的に洗浄します。
  3. ブレーキメンテナンス
    ホイールを外したこのタイミングを逃さず、ドラムブレーキのメンテナンスを行います。ハブ内部に溜まったブレーキダストを綺麗に清掃し、ブレーキパッドの残量を確認。ブレーキカムの摺動部を分解し、古いグリスを拭き取ってから、耐熱性の高いドラムブレーキ用グリスを薄く均一に塗布して組み直します。このひと手間で、リアブレーキのタッチが劇的に滑らかになります。
  4. スプロケット交換
    新しいスプロケットを取り付けます。特にリアスプロケットをハブに固定する際は、ボルトを一度に締め込まず、対角線上に少しずつトルクをかけていきます。これは、最初の「偏芯」を防ぐための重要なポイントです。最後はサービスマニュアルで指定された規定トルクで確実にトルクレンチを使って締め付けます。フロントスプロケットも同様に新品を装着します。
  5. チェーンの入れ替え
    新品のチェーンを適切なリンク数にカットします。カブのチェーンはクリップジョイント式が多いため、DIYでも比較的容易に交換できます。クリップを取り付ける向き(チェーンの進行方向に対してクリップの開いている側が後ろになるようにする)を間違えないよう、細心の注意を払ってしっかりと固定します。
  6. アライメント調整とリアアクスルシャフトの挿入
    いよいよ、新しい高精度リアアクスルシャフトの登場です。薄くグリスを塗布したアクスルシャフトをスイングアームとハブに通します。チェーンの遊び(テンション)を左右のジョイントインジケーターを見ながら正確に等しく調整し、リアアクスルナットを規定トルクで締め付けます。これで、リア周りのすべてのパーツが完璧なアライメントで統合されました。

検証:3つの軸が整った後の「乗り味」インプレッション

すべての作業を終え、いよいよヘルメットを被って試走へと出かけます。エンジンをかけ、1速に入れてクラッチを繋いだ瞬間、ヘルメットの中で思わず「おおっ…!」と声が出てしまいました。

  • 静粛性の劇的変化
    発進した瞬間、あの耳障りだった「カチャカチャ…」というチェーンの擦れ音が完全に消え去っていました。まるで高級セダンに乗っているかのような、極めて滑らかな回転フィーリングです。駆動系のメカニカルノイズが徹底的に遮断された結果、JA59エンジン本来のトコトコとしたまろやかな鼓動感だけが、ダイレクトに身体へと伝わってくるようになりました。
  • シフトフィーリングの向上
    スプロケットのロング化(フロント15T)は大正解でした。過剰だった1速のエンジンブレーキが嘘のようにマイルドになり、1速から2速への変速が極めてスムーズになりました。また、駆動系全体の「遊び(ガタ)」が完全に排除されたため、シフトペダルを踏み込んだ瞬間に「カチッ」と瞬時にギアが吸い込まれるように噛み合います。変速操作が、自分の神経と車体がダイレクトに繋がったかのような心地よい一体感を生み出しています。
  • シャーシ剛性の完成(アクスルシャフトの効果)
    リアアクスルシャフトの交換による変化は、想像を遥かに超えるものでした。
    • リア全体の剛性感向上:これまで段差を乗り越えた際などに感じていた、リアが左右に「フニャッ」と逃げるような頼りなさが一切消えました。リアスイングアームからホイールにかけて、一本の鉄柱が貫通したかのようなカッチリとした剛性感があります。
    • 遊びのない「パタッ」と倒れる旋回性:フロントアクスルを替えた時と同様、カーブでバイクを傾けようと頭の中で思った瞬間に、何のタイムラグも抵抗もなく、車体が「パタッ」と素直に寝てくれます。リアタイヤが路面を捉える感覚が、シートを通じてダイレクトに腰に伝わってきます。
    • 恐怖感のない軽快さ:車体がシャープに動くようになると、ピーキーになって怖さが出るのではないかと心配していましたが、それは杞憂でした。剛性が上がったことで挙動が完全に予測可能になり、むしろ高い安心感に包まれています。
    • カブ本来の「小回り性能」の解放:もともと驚異的な小回り性能を持つカブですが、「フロント」「ピボット」「リア」の3軸の精度が完璧に整ったことで、超低速域でのUターンや狭い路地での身のこなしが、まるで自分の身体の一部であるかのように自由自在になりました。

【総評】体感効果ランキング(個人の感想です)

今回の「精度追求カスタム」を通じて、僕自身が体感した効果の大きさをランキング形式でまとめてみました。

  1. フロントアクスルシャフト:路面からの接地感と圧倒的な安心感の向上。カスタム前後での変化の幅が最も大きく、満場一致の1位です。
  2. ピボットシャフト(メンテナンス&グリスアップ):車体の無駄なふらつきを抑え、直進安定性を劇的に引き上げる要の部分。
  3. フロントスプロケット:ギヤ比の適正化による、エンジンの唸り解消。加速感は重くなった。街乗りよりツーリングで効果大。
  4. リアアクスルシャフト:リア全体の剛性感向上と、タイムラグのない「パタッ」と寝る極上の旋回感。
  5. ドライブチェーン:加減速時のギクシャク感が消え、全体的な駆動動作がシルキーでスムーズに。
  6. リアスプロケット(軽量化):バネ下重量軽減によるサス追従性の向上。劇的な変化というよりは、全体の質感を裏から支えるマイルドな効果。

【実戦アドバイス】これから手を出す人への優先順位

もし同じように「カブの走りを上質にしたい」と考えている方がいれば、以下のステップをおすすめします。

  • まずは「フロントアクスルシャフト交換」と「ピボットシャフトのメンテ」から:走りの質が最も劇的に変わる、費用対効果が極めて高い投資です。
  • ギア比に悩んだら、まずは「フロントスプロケット(15T)」:パーツ代も安く、作業も比較的容易です。これで巡航がぐっと楽になります。さらに細かく調整したくなった段階で、リアスプロケットの変更を検討すれば充分です。
  • チェーンは消耗品と割り切る:伸びてきたタイミングで潔く高品質な社外品へ。カブならノンシールチェーンで充分です(軽量で駆動ロスが少なく、カバーに守られているため耐久性も実用上問題ありません)。

結論:1万円強の投資で手に入る「プレミアム・カブ」の質感

すべての軸が整ったカブは、もはや「単なる実用ビジネスバイク」の領域を完全に超えています。路面を滑るように走り、安定するけど、意のままに曲がります。1万円強というパーツ代(DIYでの作業前提)からは想像もできないほどの、極上の「プレミアム・カブ」の質感がここにはあります。

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おわりに:次はどこを「追い込む」か

3つの軸が完璧に揃い、シャーシとしての背骨が一本しっかりと通りました。

こうなると、次に手を入れるべき場所は自ずと決まってきます。
そう、「ショックアブソーバー(リアサスペンション)」です。

これだけ強固で歪みのないシャーシと高精度な駆動系が手に入ったからこそ、路面からの衝撃を極上にいなすサスペンションの「減衰力(ダンパー)」の仕事場が100%活きてくるはずです。すでに新しいショックアブソーバーの交換準備は整っています。次の「追い込み」が今から楽しみでなりません。

しかし……。

実は、今回の「完璧な乗り味」を手に入れるためのDIY作業の裏側で、僕はとんでもない油断による「致命的なミス」を犯していました。

無事に組み上がって「完璧だ!」と走り出した瞬間、僕の足元から響く恐ろしい異音と、ブレーキを引きずるような異様な重さ。冷や汗を流しながらガレージへと引き返し、絶望の中でサービスマニュアルと格闘することになります。

次回、【番外編】カブのタイヤ交換で「謎のパーツ」が余った話。ハブダンパーの罠 へと続きます。

DIYの楽しさと、油断が生む罠の教訓を、包み隠さずお届けしますので、ぜひお楽しみに!

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昔サラリーマンな工業系エンジニア。
今は、人に使われるのがだめで自営業で人間系エンジニア。
20代でバイクの中型免許を取り、50代半ばの今になって初めてバイクに乗り、なのでバイクの話題が多い今日この頃。

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